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osamumabu

タヌキのまんじゅう

「彦一チャン、あんた何が一番おそろしかっな。」 と、きいて来た。彦一もこまった顔して、 「そうな、人のよろこぶこつだろ。じつはまんじゅうば見っとふるえてしまう。」 と、まじめに答えた。そしたらまもなく ...

テングとかくれみの

竜峰山にてんぐの松がある、そこにゃかくれみのをもったてんぐどんがおらすげな。そん山に彦一はのぼった。高か岩に上あがって、たかんぽば目にあててながめながら 「わァ、トンさんな、あんなところにすんでごちそ ...

ベンデン柿

もう、出て来そうなもんだが……。」と、彦一がフロシキヅツミをさげて、宇土の手前まで行ったら、ヒョイと「宇土のスグルワラ」という狐が出て来たそで。 「彦一さん、何だろうか、そのツツミは……。」 「これか ...

太か友だち

彦一が、めずらしく神妙になって、つきあいの百姓家の仕事のヒマの時、馬ば借って、竜峰山にタキギとりに行きました。日暮れになって、馬に一ぱいつんで帰りよった風呂屋の前まで来たら、そこ主人が呼 びとめた。 ...

旗という字

正月のドンドやきの前の日、子供が十人ばかり集まって、ドンドヤやきのしこ(準備)ばしておりました。竹はマン中に立てて、そん上につける色紙に「ハタ」という字ば書こうとししましたが、一人も知りません。 「カ ...

生きている絵

「ごいんきょさん、めずらしかもんが手に入りましたけん、見に来なりまっせんか。」と、ごいんきょさんを連れて来た彦一が、掛軸を見せた。女が傘持って立っとる絵だった。 「雨の降る日に、この傘ばさします。めず ...

犬になった彦一

弥一どんが「おい彦一、久しぶりブリば腹一ぱい食うてみたい。」と、さそいに来た。 「タダのごたるげな。」 「よかたい、行こい。」 二人つれだって、中島町のサカナ屋から一尾ずつ買(こ)って、出町までもどり ...

キャクさる鯛

彦一がブラッと八代の町を歩いていたら、魚売りが、威勢のいい声で、 「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」 と、ふれて行くのに出会った。 「ようし、」 と思って、 「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」 にひっかけて、 「キャクさっと、キ ...

はなせ、はなせ

彦一が、熊本からのもどり道、宇土の茶店でおもしろい話しで皆をワンワンはずませていました。出かけるとしたら、 「八代へ行くとは幸い、同道いたせ。」と、二人の武士が、しゃりむり道連れになりました。 「しも ...

かねのなる木

彦一が、京都の本願寺まいりにいきました。そばの宿屋にとまったら、そこの主人が、むごう庭造りが好きで、自分の庭ば自慢しておりました。 「フム、なかなかよか庭でござすな。しかし惜しい、じゅうりカズラと、か ...