正月のドンドやきの前の日、子供が十人ばかり集まって、ドンドヤやきのしこ(準備)ばしておりました。竹はマン中に立てて、そん上につける色紙に「ハタ」という字ば書こうとししましたが、一人も知りません。
「カナで書いて、おこうや。」
「でも、正月だから漢字で書かんとエンギの悪いぞ。」
そこへ、彦一が通りかかった。
「ああ彦一おじさん、字ば教えてはいよ。」
「あなたは、そうとう頭の良い人ですからわかりますよね。」
「ハタという字。」
さすがの彦一も漢字はトコロドコロしか知らなかった。
「ハタという字かい。そらぁね、竹へんにピラピラと書くといいよ。」