彦一が、めずらしく神妙になって、つきあいの百姓家の仕事のヒマの時、馬ば借って、竜峰山にタキギとりに行きました。日暮れになって、馬に一ぱいつんで帰りよった風呂屋の前まで来たら、そこ主人が呼 びとめた。
「そのたきぎないくらにしとくか。」
「百文であげます。」
「すこし高いけど、馬の背中のは全部だろう。そんならいいよ。」
タキギは、全部おろして、だいじなクラも綱も何もかもとってしまった。
二、三日してから、
「おじさん、日暮れ風呂にわかしなさい。わしがともだちも連れて来るがいいでしょうか。ちったふとっていますがいいでしょうか。」
「ああ、よかよか。」
この前の馬ばひいて入ろうとしたら、ことわってクラも綱ももどしてくれたましたとさ。