竜峰山にてんぐの松がある、そこにゃかくれみのをもったてんぐどんがおらすげな。そん山に彦一はのぼった。高か岩に上あがって、たかんぽば目にあててながめながら
「わァ、トンさんな、あんなところにすんでごちそうをくいよらす、うまいみたい。」
と、大声ばあげた。すると、てんぐがとんできて、
「おい彦一、そん目がね、おれんにもかさんかい。」
「バッテンてんぐさん、こら人にはかされんとよ。」
「そんなにいわないで、一度でよかけんかさんかい。」
「そんなら、てんぐさん、あんたのかくれみのとかえっこしまっしょうか。」
てんぐはしかたなしに、みのをかし、どんなにみえるのか思い、岩の上からお城をみたげな。ところが何も見えん、
「彦一、こら何も見えんたい、どうしたらいいのか。」
「そらな、はんたいですよ。」
といいながら、かくれみのばきていっさんに山ばかけおりたげな。
てんぐどんは、だまされたと知ってカンカン、それから顔があかくなったとさ。彦一は町にもどり、だれも知らんみられず、すぐ酒屋で酒ば腹一ぱい飲んで、よっぱろうてそこでねむってしもたったい。
ところが、みのから足が出とったもんだから主人から見つかり、みのはとられ、もやされてしもうたげなもん。
そこへてんぐが、おっかけて来て
「こら彦一、お前は、よくもおりばだましたね、はようみのばかえせ。」
「てんぐさん、あんたののみをとったけど、ここの主人にみつかってしまい、あのかくれみのはにせものたい。」
「そうゆうことはない、みのばはよかえせ。」
「バッテンな、てんぐさん、そんみのは灰になっとるけん、その灰ば体につけなっせ。」
てんぐもしかたなしに、その灰ば体につけたら見えなくなってしまい、ほっとして山にもどっていきました。とこっが汗んでてみんな灰は落ちてしもうたげな。