「彦一チャン、あんた何が一番おそろしかっな。」
と、きいて来た。彦一もこまった顔して、
「そうな、人のよろこぶこつだろ。じつはまんじゅうば見っとふるえてしまう。」
と、まじめに答えた。そしたらまもなくして、まんじゅうが家ん中に、いっぱいなげこまれてきました。彦一は、うれしくてたまらなかったが、
「タヌキどんな、おそろしかこっばしてくれたね、どうしたらよかろか。」
と、おそろしかまねして、腹いっぱたべました。これを見ていたタヌキは、はじめてだまされたと気づき、今度は一晩中かかって、石ころを彦一の畑ん中にいっぱいなげこんだ。あくる朝彦一は畑を見てびっくり、太か声で、
「こらァいいことしてくれた、石肥三年というけん、こなにしてくれて、おれは遊んでいていい。これが馬の糞だったら、大変だった。ありがたいことだ。」
タヌキは、又しまったと思った。あくる晩、石のかわりに町中の馬の糞をひろって全部なげこんだげな。
つぎの朝、彦一が思っとった通り、畑を見てにっこり
「こりゃこまった、こまったことしてくれたね。」
タヌキは満足そうにかえり、おかげで町の馬の糞はなくなり、うつくしくなりました。