「彦一、今日はどこ行くの。弁当持って。」
「竜峰山に行きます。」
ふろしきづつみを、ぶらぶらさせて、てっぺんにのぼったら、うしろからベッビン狐がのぼってきます。
「どら、このあたりでひるねをします。」
と言うてゴロリとねた。
ベッビン狐は、そろっとそばのつつみをとって、いちもくさんに山のすみかに走って行って、子狐ばひきつれて、山のとっぺんの岩にのぼりました。
「今から、ここでべんとうにしますよ。いつも泣かされちばかりおる彦一ヤツのべんとうをぬすんで来た。」
と、得意になって開けたら、まんじゅうが10こはいっております。一番太まんじゅうを上の子狐に食わせ、うまかうまかと、よろこびました。それで、ほかの子狐にも分けてやって、自分もほうばったら、アンはとりもちだったので、アゴのくっついて、泣き出しました。一番太まんじゅう、ひとつだけは、ほんとうのまんじゅうでした。