八代の高田と日奈久温泉と言うところの間に、サンカンの狐というのがいて、よく人ばだましてました。ある日、彦一は奥さんと話し合って、馬にのせてサンカンを通りかかり、「お前、一週間するといいにわとりを持って迎えに来るよ、それまでゆっくり日奈久の湯につかっていなさいよ。」と大声で伝えて帰って行った。一週間目に夕暮れになってから馬のクラに、にわとりを縛ってサンカンまで来ると、奥さんが柳のかげから、
「あんまりおそいから、ここまで来ていました。」
「そらすまんだったな、早う馬へのんなさい。」
奥さんが馬にのった。
「にわとりは私が手にもちます。」
という奥さんをクラの上に縄でしばりつけて、
「馬から落ちないようにね。」
と鼻高々と帰って行きました。あくる日にほんとうの奥さんが帰ってきたそうな。