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彦一どん

はたけのうね

ながしで球磨の相良さんがな、塩にそうにゃ困っとらすて聞かした松井の殿様が、彦一に塩ばとどくる役目ば言いつけらしたってたい。彦一は、雨が止むとば待つとって八代から出かけたげな。ひるごろ、領地さいかいのとうげについた時、旧道がうるさか、ひどか坂がいくつもあるだいけん、馬子たちは新道さん行こうてしたばってん、彦一、

「だいじな旅だけん、旧道さん行きまっしゅかい。」

て言うて、どんどん旧道ば行くとげな。十六頭の馬についとった馬子どんたちは、ブツブツ言いったばってん、

「しょんなかたい。」て、彦一について行ったげな。

旧道は雨の後で、岩がゴツゴツ出とったり、ふとか水たまりのあったりしてかり、なんぎしいしい、球磨川の新道に出てきて、ほっとしたげな。

丁度そん時、太か荷物をせおって、球磨川の道を、こちらへ上ってくる旅あきないに会わしたってたい。

「馬子どんたちゃ、よう旧道さんきたなあ、新道じゃ、とちゅうとこんのこん雨で、こわれていたばい。」

そるば聞いた馬子どんたちゃ、彦一をみたりゃ

「うんね、おら知っとったっじゃなか、ひょっとするに思うとったばってん、よかったなあ。」

そしてかり、「昨日、雨ちっとやんだけん、畑さん出ていって見たったい。すっと、新らしかうねは、だらと駄目になとるばってん、古かうねんほうは、ちゃんとしとった、そっだいけん、ひょっとするとおもたったい。」

馬子どんたちゃ、彦一にかんしんしたげなたい。

 

-彦一どん
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