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彦一どん

大ぼらふきくらべ

薩摩国(鹿児島県)の甚四どんと、肥後(熊本県)の彦一どんが、松井の殿様の前で、ほらふきくらべばしたげな、どっちも名売ったとんちもだったので、お国の名にかけてン大きいほら話しばもって来らしたたい。はじめ薩摩の甚四どんが話し出さいたげな、

「薩摩には、桜島大根ちゅうて、太か大根のあるばってん、今年はいままでない太い大根がでけた、畑一にはいらないごたのがでけましたったい、まわんの三十尺どまあリましたろ。」

甚四どんの話に、松井の殿さんも、家来たちもとっても驚いたげな。ところが甚四どんに、にこって笑うて、

「なぁん、この大根がみんな葉なし(話)ですたい。」て、言うたけん、みんなは、笑わしたげな。こんだ、肥後の彦一どん、どぎゃん話ばすっどかて、まっとったりゃ、「エヘン」て、一ちょうせきばりゃばすっと、殿さんの前さん出ていたち、おじぎばして、

「こん前のこっでした、ちょうど、わたしが「ふだん辻」とこいると、急に大雨が降ってきました、ぬれてこまっとりましたりゃ、侍さんの二、三十人が全部がはいる太か、ふきの葉ばもって来て、そん中にぬれとった人たちば全部入れちもろうて、大助かりしましたたい。」

この話をきいとらした松井の殿様も、「彦一、八代にゃ、そぎゃん太かふきがあっとかい。」て、言うて、ひざをのり出して、聞かしたもんだけん、彦一も「はい、殿さん、こらぁ、ほらふき、ですたい。」て、言うたげな。

薩摩の甚四どんも、彦一は、おれよか、上ばいておもいなり、薩摩国へもどらいたげな。

-彦一どん
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