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彦一どん

梅の実

八代のふもとに、わるか銀ぎつねがおって、人が通っと、わるかこつばっかりしよったげな。ちょうど彦一が球磨川に鮎つりいたてもどりみち、梅の木下でゴツンて梅実のあたったもんだけん、上みたリや、きつねやつが笑っとる。はらんたったばってん

「おい、ありがと、こらあうめえことにうちあたるてこつだろう。ようおしえた。こられ少なかばってん、あとかり食えよ。」 彦一が鮎ば一ぴき木のねもとにおいて、舌どん出してもどったげな。あくる日、こん狐は、きずだらけで、「彦一ちゃん、もうわるかこたけっしてせん、ひどかめにおうたっばい。」

「ほう、どぎゃんしたっな。」

「あんたがいったあとかり、役人のぐっさりきたけん、うんとほうびばもらおておもうて、梅をたくさんくらわせたりゃ、怒って、おりばつかまえ、殺されそうになったっばい。」

「そぎゃんだったな、これからわるかことしなんなよ。」

きつねも彦一には、かたなかったげな。

-彦一どん
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