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彦一どん

とっくりのなぞ

光徳寺の珍念な、頭がわるか上、大めしぐらいだったげな。ある日、和尚さんが小僧をよんで、

「珍念、十三里をかけてうまかもんをかってこい」

て、いうて使いに出さしたげな。ところが、しょぼたれてもどってくると思うとったら、元気でどってきた。

「和尚さん、いってきました。はい。」

和尚さんが、にこにこしてうけとらしたばってん、ピンとこらしたげな。あくる日、また小僧ををよんで、

「酒を、二升かってこい。」

て、いうて一升どっくりばやらしたげな。

「和尚さん、こら一升どっくりでっしゅ、二升は、はいりまっせんばい。」

和尚さんな、小憎をにらみつけて、

「とっくりきいてみれ。」

ぽかんとしとる小僧に、

「よかか、昨日は安かったばってん、今日は彦一どんにきいてみャ。」

て、いうて、いってしまいました。

小僧は、とっくりばかかえて、また彦一のとこにいって、

「彦一ちゃん、たすけてくだり。」

「どぎゃんしたつな、とっくりばかかえて。」

「あって、こんとっくりに、酒をば二升かってこい、わからんなら、一升どっくりにきけて、彦一もわかりますか。」

「そぎゃんな、とこっで、とっくりきいてみたかな。」

「そぎゃんいうたって、とっくりはものばいわんもんな。」

「あって、和尚さんがなとっくりきけていわしたろもん、うそはいわさんどもん、どう、おるがきいてみろか。」

彦一が、とっくりに耳ばひっつけて、

「とっくりどん、あんたん腹に、酒二升入るかな・・・、なん、一升しか入らん、あ、小僧さんの腹が、うらやましか・・・。あ、小僧さんの腹が大きいと、子どんくせ、大人ごとめしをくう・・・、うん、そんかわり、やせもせんばってん、小僧さんにな、ぼやっとしたりすんのは、なに人間のくずばい・・・、そぎゃんな、わかった、わかった、そぎゃん言おう。」

「珍念どん、いまんときいたな。」

小僧は、真剣なつらばして、

「彦一ちゃん、ようわかりました。これかり気をつけます。」

「いいか、和尚さんもよろこばしなっせ。」

大ぐいをやめた珍念もよか和尚さんになったげな。

-彦一どん
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