さんかんのところで、村者たちが何かがやがやさわいどる。ゆうべの大雨で、山くずれして、太か石のおちて、道をふさいでしもうとる。あんまり太か石で、重うして、だあれもどぎゃんもしきらんだったげな。こまっとるとこれ、ちょうど力強か男の通りかかったもんだけん、たのうでみたら、「おら、今、腹がヘっとるけん、飯ば食わせてくるんなら、その石を運んでやりまっしゅたい。」
て、いうた。村者な、そんくりゃのこつあ安しいこつ、て、いうて話しおうて、いっぴゃたいて、ごっそうした。男は腹、いっぱいたべて太か石のところで、
「さあ、石ば運ぶけん、おれんせなかに石ばのせちくれ。」
みんなぷりぷりはらかいて、じぶんでやれといいだした。男は、
「石を運でやるていうたばってん、このせなかにのせてくれんことには運ばれんばいた。」
て、かえってしまおうとしたところ、日奈久かりもどりよった彦一が、こればきいて、
「おっさん、ちょっと待ちなり。」
ていうて、村のもんに、
「あ~たたちゃ、その石のとこれ、石よか太か穴はほってくんなり。」
村ン者な、何かしらんばってん彦一のいうごつ太か穴ばほったげな。
「おっさん、こんあにゃ、あんた、はいんなり。上かりこん石ばころばきゃて、せなきゃのせちやるけん、そりかり運びきっどもん。」
男は、まっさおなって、がたがたふるいだしたげな。
「運ばんとなら、役人にゆうか。」
男は、村のもんに、さんざんあやまったうえ、金まではらって逃げだゃたげな。あとかり、みんなで、太か石を穴なかにころびいれて、かたづけ、よろこうだげな。