師走が近づくと彦一の家には、毎日借銭とりの多くきてこまっとったげな。そこで、おくさんと相談して、魚屋からまぐろん腹わたば、家へかって来て、彦一の腹に上のせて、死んだまねばしとったげな。借銭とりの来ったひに、奥さん、
「彦一なあ、こぎゃん借銭ばっかっで、人さみゃめいわくかけちすまんけん、よろしゅいうてくんなりちゅうて、腹切って死んましたっばい。」
て、来る人ごて涙ばながすまねして、ふとんの中ばめくって見すっと、彦一の腹上、腹わたんゆたゆたしとる。借銭をとり来た人たちがは、
「むぞなげなこっしたな。よかひとだったて。」
て、いうて、香典ばええて、きのどくしゃしてもどっていったげな。あくる正月に、彦一ちゃ朝はよう起きって、うんともろうた香典で、紋つきの着物を買うて、借銭のあった家ば一軒一軒年始まわりしたげな。
「おめっとうございます。みなさんのお陰で彦一も、こんとおり生まれかわって来ました。よろしゅうおねがいしますな。」
みんな、あいた口のふさがらんだったげな。