出町の庄屋どんがよそかりもどってこらしたところが、大事しとらしたつぼが、いつんまにか、われとったげな。 庄屋どんな、たまがって、家人ややとい人たちばよばしたげな。
「こんつぼを割ったのはだれか。正直にいえ。」
て、目はさんかくにして、腹お立っていました。そればってん、だれもおらんだったげなもん。庄屋どんは、とうとう彦一の家へ相談しこらしたげな。
「なあ彦一、うちわったやつば見つくる、よかかんがえはなかろか。」
彦一、いっとき考えよったが、
「そらあな、よかこつんあるばいた。おれまかせときなっせ。」
そぎゃんいうと、彦一は妙見さんの神主さんから、ふうるか箱ばかってきて、庄屋どんがたでかけていかしたげな。やとい人たちを、せんぶあつめ、そん前箱ばおきます、
「こん箱は妙見さんに伝わっとる不思議な箱ですたい。こん中へ自分の名前ば書いた紙ぎればいれなっせ、のりとをあぐっと、犯人のかいた字ばっかり残って、あとんもんは、字が消えて白紙になっとたい。」
彦一は言うたとおり、やとい人たちは名前ばきゃた紙ば箱へ、入れたげなたい。彦一がのりとばあげ、箱かり紙ばだだしたら、一枚だけ白紙だったげな。庄屋どんな、たんがって、
「彦一、無実、平肋ばっかりで、あとはぜんぶ犯人かい。」
て、聞かしたとこるが、彦一は、
「こん箱はなんでんなかったい。ほんな犯人は平助たい。」
て、いわしたげな。