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彦一どん

にらめっこ

八代で一番ふとか、かぎ屋のひとり娘が、どぎゃんこつがあってん笑わで、一日中泣いとったり、腹立てたりして、こまらせとったげな。医者どんが、あっちこっちかりきて、いろいろんなこつばしてみたばってん、どぎゃんもならん。

「一ぺん笑わすっとよかばってん、むつかしか病人ばい。」

て、医者どんはいうて帰っていったげな。そんでこんで、しばいを見せたり、おどり・うたの名人のてよんできて、どぎゃんかして笑わしゅうてしたばってん、やっぱり、笑わんでした。しかたなしにとうとう彦一にィ頼みこらしたげな。そっだけん彦一に、笑わんくらべば申しこんだげな。

娘は、彦一と話しとるあいだ、こん人をおどか人だろかて思いながり、にらめっこばするごてしたげな。彦一は、いちだんと娘はつんてしとった。そっでこんで、口ばむすうで目を玉ばふとうあけち、ねらんどったげな。娘も、また、まけん気で、口ばよがめ、びんたばふくるかし、目ば丸うしたり三角にしたりしたげな。彦一、たいぎゃなこらえとったばってん、娘がしみに舌ばじゃあて、ひょっとした顔をみせたもんだけん、彦一ももてきらでん、

「ワァハッハッハハ……。」

て、ばたぐるうて笑いでってしもうたげな。そるばみっと、娘も勝ったもんだいけんうれしくて、彦一につられて、

「ホッホッホッ……。」

て、笑いらしたげな、かぎ屋からのほうびはたくさんだったげな

-彦一どん
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