「なんか、あったな。」
て、きいてみたげな。すっと、
「じつぁな、こん村の喜作どんていうて、あきないをしてまわるひとがおらすとたい、そん喜作どんな、ほんなこつもう四、五日前もどってくるごつなっとったばってん、まだ、もどってこらっさんとたい。そうだいけんあした、山をさがせんばならんて、話しよったったい。あんたは会わんだったかな。」
彦一は、そん時、ハッて胸にきたこつのあったもんだいけん
「気のどくばってん、そん人もう死んどらすばい。」
「なんてな、死んどらすてな、あんたは、そうば見たっ。」
「うんね見ちゃおらんばってんな、こっかり一里ばっかり山道ば行くとしばらくすると、太か松の一本ありますもん、そん松の木の下の深かたんあたり、死んどらすて思うとですたい。」
村のものたちゃ、すぐさみんなたいまつばもって、山さんのぼって行かしたてたい。そしたら、ほんなこて喜作どんの、切り殺されとっとた、見つかったげな。そん晩な、庄屋どん家でとまったった彦一が、朝早よう出かきゅうてしよったとこが、代官所の役人たちきてかリ、山賊の手下だろて言うて、ろうやにぶちこんでしもうたげな。彦一は、役人に、
「あすこんそばば通っとき、からすが一ぴゃきとったけん、そっじゃなかろかて思うて、言うたっですたい。」
て、説明したばってん、彦一のこっば知らん日向の役人たちゃ、
「そぎゃんこつの、わかるか。」
て、ゆるさっさんだったげな。彦一は、ろうやんに、閉じ込められました。