八代の城下の町人どんが、
「道をあゆみよって、ひょっと道ばたん落っとるぜんば拾うとんごつ、うれしかこつぁなか。」
て、話しながり通りよったっば聞いとった彦一も、おるもいっちょぜにば拾いに出かて、八代の町ばされたばってん、どけんもぜんな落ちとらんだったげな。
そっで、彦一も考えて、自分のぜんぶくろかり、ぜんば出せば道ばたん草の中伏せて、それで拾うてみゅうて、草わりになかば探してみたげな。
ところが、さっかりなげたばっかりのぜにが、どぎゃんしてんみつからんもんだけん、ぜんのおしゅして、なきべそかぶって、草わらをさがしまわったばってん、どぎゃんしてんみつけださん。
こまってしもうた彦一、子どんがするまじないば考え出ゃて、手んひりゃぁつばばのせち、指でポンてたたゃて見たげな。
すっと、つばは東の方さんとうでいったもんだけん、つばんおちったあたりば、いしょうけんめさぎゃてみたげな。
とこるが草の根のとこり、ぜんのうっぱすまっとったてたい。
彦一は着もんの袖で、汗をふきながり、ぜにばにぎって、
「ほんなこつ、ぜにば拾うとはうれしかー。」