きつねやつが、いつも彦一にだまされてばっかりを見かねてち、たぬきやつが萩原の土手で、彦一ば待つとったげな。
「彦一ちゃん。」
「オー、たぬ公かい。」
「きつねやつ、ちょっとばかばいな。いつでん彦一ちゃんにかつがれ・・・。」
「ハッハッハッ・・・・・・ぬしゃ りこさんのごたるね。」
「エー きつねとはちがいますばい。」
「そぎゃんかい、なんにばけるのが得意かい。」
「わたしゃ一つ目小憎でん大入道……。」
「ほんならいっちょ、ばけくらんごばしてみゅうか。」
「うん、そらおもしろかな、やりまっしゅ。」
「なーたぬ公見てみんさい、あっちかりつえばついた、おとりよしが来よらすどが、あんひとば、ぬしが大入道でたまがらしたら、おるが負けたい。」
たぬき笑うて、
「アッハッハッハッ……わしが大入道になんなら、どんな人もんでひったまがるけんな、まあ見とってみなっせ。」
たぬきやつが雲にとどくごたる大入道にばけたばってん、じいさんな、なんのこつもなかごつして歩いていかすげな。
「彦一ちゃん、こぎゃん太かもんな、はじめっな。」
たぬきやつ、いきばせっきってか「フウフウ」言うたげな。
「そんならこんだったら、よう見とけよ。」て、いうて、
「ヒヒーン・・・。」
て馬のなきまねばしたげな。
ところが、じいさん驚いて、道のかたすみにちぢくれらしたげな。こんじいさんは、あんまさんだったてたい。