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彦一どん

草ばんかげ

あるとき、彦一の親方さんへ、たのんだげな。

「もう、長かなる。こぎゃん年とってしもたもんな、こんごら、よう、病気なることが多くなってしもたっですたい。そっでですな、ほんなこてすまんこつですばってん、めいどに行くお金ば、ちっとばっかり、私にへくだせませんか」

彦一へ、もうお目ににかからんで、あわれなこつば言うもんだけん、親方さんも、むげえこって思うてち、お金ばやらしたげな。ところが十日ばっかりしたある日のこつ、親方さんが、くま川のともを歩りて町さんもどってきよらすとに、彦一にあってしもたげな。

「彦一、ぬしとゆうとったが、うそば言うたね。こんまえに、もうあうこつもなかごていうたろが。」

それば聞いた彦一、どてんの草ば頭の上のせてかり、

「はい、そっでですな、草ばんかげかり親方さんば、おごうどりますたい。」

て、いうち、親方さんばおこらんでした。こっちば見らした親方さんも、笑えながら家さんもどらしたてたい。

-彦一どん
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