松井の殿様な、きのこんがそうにゃ好きだったげな、ある年、
「一軒かり千本ずつ、木のこばもってけ。」
て、役人どんが彦一の村もいうてきたばってん、こんとしゃ、また、でん年だったげな。どぎゃんすんならよかろかていって、村もんがこまってしもうとるとこれ、彦一がきたけん、彦一にたのんだげなたい。彦一ちゃん、木の苗ば千本もって、役人のとこれいったげなたい。
「きのこば、もってきましたばい。」
役人たちが、中ばみて、
「彦一、こら、きのこじゃなかじゃなっか。」
「そぎゃんこつあなかでっしゅが、きの子ですばい。」
「ばかいうなこついう、きのこてにゃ、しいたけんこつぞ。」
「ああ、そぎゃんでしたか、しいたけならもうありまっせんたい。」
「しょんなかたい、来年まちがわんでもってこいよ。」
「そぎゃんかいた。しなら、もう一ぺんききますばってん、きのこていうとは、しいたけんこつ。しいたけていうとは、きのこのこつですな。」
「うん、そぎゃんたい。まちがゆんなよ。」
「はい、はい。」
彦一は、そんままもどされたげな。とこるが、あくる年の秋、まぁた、役人のきて、
「一軒千本ずつ、しいたけばもってけ。」
て、いうて、ねんばおしてもどったげな。運が悪くて、まぁた、でけんだったけん、だぁるもこまってしもうた。しょんなしゃ彦一が、また木の苗ばかるうて、いったったい。役人たちゃ、こんだ彦一もどぎゃん話しよっとけもってきた。なかばあけてみたりゃ、木の苗ばつかり、
「こら、彦一、とぼくんな。あぎゃんいうたて、また木の苗ばもってきたじゃなっか。」
「はい、まちがわんごつもってきましたばってん、何か。」
ちゅうて、とぼけたつらして、
「あって、去年、きのこていうた、しいたけんこつ、しいたけちゅうとは、きのこんこですけん、ことしゃよかろうておもうて、きたっですたい。」